普段はジッと動かず
居眠りでもしているようなクモだが、
張り巡らした網に獲物がかかると
途端に目覚める。
彼女の四肢には緊張というエナジーが漲り、
それは観察するこちらにも伝わってくるほどだ。
だが、待て。
ハンターは急いではならぬ。
まずは獲物が何者であるかを見極め、
仕掛けの糸のかかり具合を見極める。
失敗は許されない。
一気に攻めるタイミングを図るのだ。
そして溜め込んだ「動」が爆発する。
まことに驚くべきは、
攻めに転じた時の速度である。
獲物にサッと駆け寄り
四肢で効率よく転がし
幅広に吐き出した糸でグルグルと獲物を包んでしまう。
獲物は何が起こっているのかを理解する間もなく、
身動きの出来ないミイラに変えられてしまう。
ハンターは果敢であると同時に、
慎重でなくてはならない。
いったん獲物から離れ、
獲物が完全に己のコントロール下にあるか、
そして己の捕獲技術を確かめるかのごとく、
時間をかけて様子見をする。
「もうよかろう」と本能が判断を下すと、
今度は獲物を網の中央の安定したテーブルに手繰り寄せ
そこで初めて食事を開始するのだ。