2013年10月1日火曜日

「捕獲」 ナガコガネグモ Argiope bruennichii


普段はジッと動かず

居眠りでもしているようなクモだが、

張り巡らした網に獲物がかかると

途端に目覚める。


彼女の四肢には緊張というエナジーが漲り、

それは観察するこちらにも伝わってくるほどだ。


だが、待て。

ハンターは急いではならぬ。


まずは獲物が何者であるかを見極め、

仕掛けの糸のかかり具合を見極める。

失敗は許されない。


一気に攻めるタイミングを図るのだ。


そして溜め込んだ「動」が爆発する。


まことに驚くべきは、

攻めに転じた時の速度である。

獲物にサッと駆け寄り

四肢で効率よく転がし

幅広に吐き出した糸でグルグルと獲物を包んでしまう。

獲物は何が起こっているのかを理解する間もなく、

身動きの出来ないミイラに変えられてしまう。


ハンターは果敢であると同時に、

慎重でなくてはならない。


いったん獲物から離れ、

獲物が完全に己のコントロール下にあるか、

そして己の捕獲技術を確かめるかのごとく、

時間をかけて様子見をする。


「もうよかろう」と本能が判断を下すと、

今度は獲物を網の中央の安定したテーブルに手繰り寄せ

そこで初めて食事を開始するのだ。